2025年5月4日

JICA筑波の図書室でCLIJALの選んだ本を展示していただいています!

 CLIJALではメンバーが厳選した本と本の説明(日本語・ポルトガル語・スペイン語の参加国語)、写真パネルや地図、ラテンアメリカの民芸品などをパッケージにした「図書展セット」を貸し出しています。

2025年4月から5月にかけての1ヶ月ほど、JICA筑波の図書室で展示していただいています。

4月19日の一般公開日におじゃましてきました。ニカラグアから来られている研修生による絵本の読み聞かせもあり、大盛況でした! 写真は展示の様子です。

図書展セットは随時貸し出しています。詳細はこちら

ぜひ、ご活用ください! お問い合わせをお待ちしています。






2025年5月3日

【絵本で知ろう! ラテンアメリカの国】Vol.2 道はみんなのもの



道はみんなのもの

クルーサ文
岡野富茂子・岡野恭介 共訳
モニカドペルト絵
さ・え・ら書房2013年1月発行
ISBN978-4-378-04136-0
本の詳しい紹介はこちら




つまらなさそうに遠くの町並みを眺めている子どもたち。下に広がるのは、近代的なビルと大きな道をどんどん走っているトラックやバス。表紙から裏表紙にまで続く1枚の絵で対比されるトタン板の家の建つ赤茶けた場所との違いにびっくりすることでしょう。
ここに描かれているのは、ベネズエラの首都カラカスです。南米北部、カリブ海に臨む自然豊かな国ベネズエラは昔はコーヒーなどの輸出で有名でした。1920年代に入って石油輸出を始めると、地方の町や村から人々が都市へやってきました。カラカスでも、街を取り巻く山の斜面に急ごしらえの家を建てて仕事を求めてやってきた人たちが暮らし始め、そのようにしてできた集落が「バリオ」と呼ばれています。
山の自然はすっかりなくなり、子どもたちの遊び場所は、家々の間の狭い道だけ。それでも、うるさいと怒られ、車が入ってくると「こんなところで遊ぶんじゃない」と怒鳴られる始末。「道はみんなのものだよ」と口答えしても、大人は誰も聞いてくれません。それで表紙の子どもたちはふくれっ面をしていたのですね。
バリオの中には普通の家を改造した図書館がありました。本を読んだり、ゲームをしたり、 粘土遊びやお絵かきもできるけれど、やっぱり外で遊びたい。どうしたら自分たちの遊び場が持てるのかと考え込んでいると、図書館員が子どもたちの意見に耳を傾け、背中を押してくれたのです。「遊び場がありません。公園を作ってください」と書いた横断幕と意見書を持って、市役所に出かけた子どもたちは市会議員か市長に会わせてほしいと言うのですが・・・。
この絵本は、バリオに住み、遊び場がほしいと願っていた子どもたちが実際に体験したことを元にしたお話なのだとか。子どもたちの行動力が頼もしく、市会議員の欺瞞や大人の身勝手さにびっくりしつつも、この1人ひとりの有り様が社会そのものを表しているのだなと感じられます。
やがて、自分たちの手で公園を作り始める住民と子どもたちの姿に、読者も嬉しく思うはず。自分たちの思いをしっかりと伝えて、自ら行動する子どもたちを支え、見守る大人が図書館にいることが素敵。本の力、教育の力を大切に思っている作家ならではの作品です。

(ほそえさちよ)

2025年4月24日

【絵本で知ろう!ラテンアメリカの国】Vol.1 アンデスの暮らしを知ろう 


じゃがいもアイスクリーム?

市川里美 作 BL出版 2011年7月発行 1400円+税 (ISBN9784776404590)
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地球ものがたり インカの村に生きる

関野吉晴 著 ほるぷ出版 2012年10月発行 1800円 + 税 (ISBN9784593586783)
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15世紀に始まる大航海時代にスペインやポルトガルの植民地にされた中南米・カリブ地域では、それ以前からそこにいた先住民、ヨーロッパ系の人々、その後連れてこられたアフリカ系の人々の文化などが混ざりあっています。

ブラジル以外の大半の国々ではスペイン語が話されていますが、 アンデス山脈一帯にはケチュア語やアイマラ語を話す先住民がいます。今回ご紹介する絵本の舞台はペルーのアンデスの高地です。描かれているのは「ペルーの」というよりも、ボリビアなどにも広がるアンデス山脈の先住民の文化です。

物語絵本 『じゃがいもアイスクリーム?』の見返しには、アンデスの村の全景が見えます。 主人公の少年の住む標高4000メートル (富士山よりも高い!) の村は、ジャガイモしか採れません。ごはんもおやつもジャガイモ。でも、ジャガイモといっても種類は豊富です。ここはジ ャガイモのふるさとなのです。

幼児・小学校低学年から、お話を楽しみながらアンデスの暮らしに親しめます。実際に現地で取材した著者の温かい絵からは、色あざやかな毛糸の帽子や衣服、家の中、アルパカを飼いジャガイモを収穫する様子などが伝わってきます。ジャガイモでどうやってアイスクリーム ができるのか、興味がわいてきます。

もう1冊、探検家の関野吉晴さんのノンフィクションの写真絵本『地球ものがたり インカの村に生きる』は、ペルーの山奥の、日本人が誰も行きそうにない村で撮られた貴重な記録です。 厳しい自然の中、常に集まり、話し合い、力を合わせる家族やコミュニティ、家畜の世話など役目を負いながら遊ぶ子どもたち。その日常のさまざまな表情をカメラがとらえます。

保存用の乾燥ジャガイモはこんなふうに作られるのか、アルパカはこんなに役に立つのか、 トウモロコシにはピンクや紫などこんなに種類があるのかなど、見るたびに驚きや発見があり、 3・4年生から大人まで楽しめます。ゆっくりと本をめくれば、深く心にとどまる自分だけの気づきや考察につながることでしょう。

(宇野和美 うのかずみ)