【絵本で知ろう!ラテンアメリカの国】Vol.10 旅で知るアルゼンチン、チリ
ダーウィンといえば、「種の起源」を発表し、自然科学の世界のみならず、思想的にも後世に大きな影響を与えた科学者として知られています。
その思索の元になったのが、22歳の時に乗り込んだ、イギリス海軍の調査船ビーグル号での5年間の航海でした。この旅は、ガラパゴス諸島でダーウィンがフくちばしィンチという小鳥の嘴の形などからさまざまな発見をしたことが有名ですが、航海の大半は南アメリカ大陸の測量に費やされていました。「チャールズ・ダーウィン、世界をめぐる」は、その様子を絵地図とイラストで描き出した絵本です。
船酔いに苦しみながら、サルバドル、リオデジャネイロ、モンテビデオ、ブエノスアイレスと、各地の港から上陸して南アメリカ大陸を探索したダーウィンは、イギリスとはまったく違う風土にワクワクしていました。熱帯雨林で珍しい蝶や甲虫、トカゲなどを集め、その剥製をイギリスに送り、アルゼンチンではパンパと呼ばれる乾いた草原を、現地の人たちと一緒に馬に乗って駆けめぐりました。海辺でメガテリウムという何万年も前に生きていた巨大ナマケモノの仲間の化石も掘り出しています。
大陸南端のホーン岬を回るときは、氷河や雪を抱いた山を見て、その美しさに感嘆したことを日誌に書いています。多様な地形、豊かな自然や生き物の姿を観察したり、火山の噴火や地震に遭ったりすることで、ダーウィンは地球の大きさとはるかな時代から続く命の営みを体感し、考えを深めていったのです。
ダーウィンが貝の化石を見つけて喜んだアンデス山脈は、チリを南北に走っています。「アンデスの少女ミア」は、その山々を仰ぐ麓の土地にくらす人々を描いています。ゴミの山から使えそうなものを探し出し、街で売って生活しているミアの家族。ある日、父親が街から連れてきた子犬の世話をするミアが、迷子になってしまいました。子犬を探して山を登っていき、高地で見つけたのが、見たこともない美しい白い花。その花を育てて、街で売り始めたミアたちの暮らしは、少しづつ変わっていきます...。
作者は現代の暮らしの格差から目を背けず、そこからの希望を描いています。チリを旅した折に出会った家族との触れ合いから、紡ぎ出された物語が温かい。
(ほそえ さちよ)