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日本ラテンアメリカ子どもと本の会(CLIJAL)の活動から〜日本ブラジル外交関係樹立120周年〜

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日本ラテンアメリカ子どもと本の会 (CLIJAL) の活動から 日本ブラジル外交関係樹立 120 周年       小高 利根子   2015 年は日本とブラジルの外交関係樹立 120 周年の記念の年で、年間を通じて様々な記念行事が行われました。首都ブラジリア建設で有名な建築家オスカー・ニーマイヤー展は東京現代美術館で 7 月から 10 月まで長期的に開催されましたし、ネルソン・ロドリゲスの演劇「禁断の裸体」上演、各種展示会、講演会、コンサート、映画上映、テレビ番組などが目白押しでした。 私たち「日本ラテンアメリカ子どもと本の会」に直接関係があることとしては、 2014 年に子どもの本の分野で最も歴史のある大きな賞・国際アンデルセン画家賞を受賞したホジェル・メロ展とブラジル児童文学の金字塔『ぼくのオレンジの木』の日本語版出版の二つが挙げられます。  ホジェル・メロ (Roger Mello) 展は 4 月から 5 月にかけて福岡県立美術館で、また 8 月から 10 月までは東京のちひろ美術館で開催されました。メロは 1965 年生れの画家。百冊以上の絵本を手がけましたが、そのうち 20 冊はテキストも自ら書いています。今回の展示では代表作 14 作の原画 100 点とその場面の日本語訳、資料、ブラジルのお祭りなどにまつわる品、飾り物などが展示されました。 14 の絵本は内容別に大きく3つに分かれています。ひとつはブラジルの歴史や伝説、伝統文化に関する本、もうひとつは社会問題を扱ったもの。そして最後に世界を旅した経験に基づく作品。このうち二番目のブラジルの社会問題を直接扱っている本は私も発売と同時に入手していて、なかでも一番気に入っているのは『マングローブの子どもたち』。貧しい中でも生き生きとした子どもたちの生活がコラージュを交えた美しい挿画と共に描かれています。すでに翻訳もできているのですが、なかなか出版社を見つけられずにいます。もうひとつ『炭焼き少年たち』というのは児童労働を扱った作品で、山火事の炎が飛び出してきたり、特殊な塗料を使ったり…ととても意欲的なもの。内容的には子ども向けの絵本というよりは大人向けだろうと思います。  『ぼくのオレンジの木』 ( 原題: O Meu Pé de Laranja Lima,1968)...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その12)

CLIJALの活動から~  白いハトがやってきたら… 伊香祝子  今回は、アルゼンチンの民話に登場するメツゴシェ (Metzgoshé)というヒーローをご紹介します。メツゴシ ェはアルゼンチン北東部パラナ川流域に暮らす先住民 コム(Qom)の伝説にたびたび登場する人物です。  アルゼンチンに先住民族…というと驚かれる方も 多いかもしれません。全人口にしめる先住民族人口が 1.7%(約60万人 2005年国立統計局統計)という数 はたしかに少なく見えます。しかし、2011年にアル ゼンチンを訪問した当時の国連特別調査官アナヤ氏 は報告書のなかで、統計の取り方次第では200万人に のぼる可能性も指摘しており、複雑な背景を感じさせ ます。    話を元に戻すと、コムはアルゼンチン北東部から パラグアイ、ボリビアに広がるグラン・チャコ地域を 中心に暮らす先住民族の一集団で、アルゼンチンには およそ4万7千人(05年の統計)が住んでいると言わ れています。そのコムの人たちのあいだで語り伝えら れるメツゴシェとはどのような人物なのでしょうか?  アルゼンチン出身の作家・人類学者コロンブレスの 『アルゼンチンの神話上の存在たち』によれば、メツ ゴシェには大きく分けてふたつの人物像があります。  ひとつめのメツゴシェ像は、コムの神“K’atá”が人類 を作りだした時、最初に地上に送った男性で、あとか ら送られてきた男たちに、釣りや狩りの方法を教え、 はちみつの採集法や弓矢、網の作り方などを伝授した そうです。また、家の建て方や、山や水辺に潜む危険 性について、動物たちから教わったことなども彼らに 伝えたと言われています。もうひとつのメツゴシェ像 は、ヨーロッパ人との接触の歴史が織り込まれたもの で、チャコの他の民族や、コムの土地にやってきたキ リスト教徒たちと闘ったというものです。現在のコム の土地が含まれる北東部のフロンティアは、19世紀 末から20世紀の初頭にかけてアルゼンチン領に編入 されていくのですが、伝説のなかの「キリスト教徒」 は、アルゼンチンでは独立の英雄と目されている軍人 サン・マルティン(1778-1850)に率いられた人たち を指しています。    私がメツゴシェの名を知るきっかけとなったの は、一昨年亡くなったアルゼンチンの児童文...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その11)

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CLIJALの活動から~  負の歴史と向き合うアルゼンチン児童文学 宇野 和美 4月末に、はじめてアルゼンチンを訪れました。 ブエノスアイレスのブックフェアが目的でしたが、 それ以上に印象深かったのが la nube (雲)という 名の私立図書館でした。スペインでは、内戦から フランコ死去まで続いた 40 年近い独裁で、それ以 前の児童書の多くが失われてしまったので、アル ゼンチンもそうだろうと勝手に思っていたのです が、宿を提供してくれた児童書編集者のジュディ が「絶対見るべき」と案内してくれたこの図書館 には、元小学校教師の館長パブロ・ L ・メディーナ さんが収集した、 7 万冊にものぼる、独裁( 1976 ~ 83 )以前から現在に至る子どもの本が収蔵されて いたのでした。  私が訪れたとき、読書室の一角では、児童書研 究者を中心とした 7 、 8 名のグループが勉強会を開 いていました。ピノキオのコレクションや日本の 紙芝居もある貴重な蔵書のほかに館内には、 1000 冊以上の貸出用の本のコーナー、古本から新刊ま でを扱う書店、映画やオーディオビジュアルの歴 史をたどる品物(蓄音器や昔の映写機など)を集 めた部屋や、人形劇の舞台、外遊びのできるパテ ィオもあります。現在の場所に来てからは 10 年ち ょっとですが、 la nube の活動は 1975 年から続けてい るそうです。  私が以前にアルゼンチンの作家オスバルド・ソ リアーノ文/ファビアン・ネグリン絵『ぼくのミ ラクルねこネグロ』(独裁時代にパリに亡命した 一家の男の子のお話:アリス館)を翻訳したこと を告げると、パブロさんは、出版されたばかり の、ガブリエラ・ペスクレビ著 Libros que muerden と いう本を見せてくれました。これは「有害な本」 として独裁の 7 年間に発禁処分となった児童書のカ タログです。ジャングルに帰るためにゾウなどサ ーカスの動物たちがストをするという、エルサ・ ボルネマン (1952-2013) の Un elefante ocupa mucho  espacio( ゾウはたくさん場所をとる ) 、線があったら 何ができるかをマンガ風のしゃれたタッチで描い たベアトリス・ドウメルクの La línea( 線 ) (これ...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その10)

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CLIJALの活動から~  いたずら大好き ブラジルの「サシー(SACI)」 小高利根子  今回はブラジル人なら誰でも知っている伝説上の キャラクター、「サシー」をご紹介 しましょう。  サシーは赤い三角帽子をかぶり、 口にはいつもキセルをくわえ、一本 足でピョンピョン歩いて、いろいろ 悪さやいたずらをする黒い小人。ど んな悪さかと言えば、ミルクを酸っ ぱくしたり、ハサミを隠したり、鍋 の煮豆をこがしたり、スープにハエ を入れたり…。家の中だけではあり ません。馬をおどかしたり、洗濯物 をからませたり、鶏の卵を孵化させ なかったり…。ありとあらゆるいた ずらをして人を困らせては愉快がる のです。  このサシーについて書かれた本や 絵本はブラジルにたくさんあります が、昨年暮れ、日本でも『いたずら 妖怪サッシ 密林の大冒険』の邦訳 が出版されました。これは著名な文 化人、モンテイロ・ロバートの絵本 『黄色いキツツキ農園』シリーズの うちの一巻『サシー』の翻訳です。タイトルは『サ シー』ですが、その他にもクルピーラ、ボイタタ、 牧場のネグリーニョ、オオカミ男、クッカ、水の精 イアラなどが次々と登場し、ブラジルの伝説上の主 だったキャラクターを一挙に紹介している感があり ます。  さてこのサシーはブラジル人の現代の日常生活の 中ではどんな形で登場するのでしょうか? 筆者は ブラジルに通算25年ほど住んでいますが、人間関係 をスムーズにするためにサシーはとても重要な役割 を果していると思っています。  何か失敗したとき、誰よりも本人が後悔したり、 しょげかえっているはず。そんな とき、まわりの人が「あっ、それ はサシーの仕業だ!」と言ってく れたら、どんなに救われることで しょうか。  ブラジル人とつき合っている と、人をとことん糾弾して断罪す るようなことは極力避けようとし ていることが良くわかります。こ んな国民性にサシーはぴったりの キャラクターなのかも知れませ ん。世の中には「サシーの仕業」 ということにすれば丸くおさまる ようなことはたくさんあるはず。 本当に糾明しなくてはいけないよ うな重大なことでなければ、せい ぜいサシー君に登場してもらって 「一件落着」ということにしては どうでしょうか? ★現在入手可能なサシーについ...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その9)

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CLIJALの活動から~  グアダラハラブックフェアと 公立図書館訪問 鋤柄史子  昨年11月30日から12月8日まで、メキシコのグ アダラハラにて国際的なブックフェア(Feria  Internacional del Libro de Guadalajara、以下 FIL)が開催されました。私は4日間ここに足を 運びました。今回はFILの様子とともに、街の図 書館についてもお話しします。  身にしみるような寒さが続いていた東京を離れ てグアダラハラへ向かい、朝を迎えた時、太陽の 暖かさを身体いっぱいに感じました。時差ボケも 気にならず、早速FILの会場へ。FILは、年に一度 開かれるラテンアメリカ最大のブックフェアで す。メキシコ国内のみならず他の中南米や欧米等 の出版社が各々のブースに本を並べ、会場を埋め 尽くします。開催期間中は一般に開かれた時間が 設けられていて、その時間になると会場の人口密 度がぐっと高くなります。国内外の著名な作家の 講演会やサイン会、表彰式が行われる等、まさに 本の祭典、ビジネスの場としてのみならず、老若 男女問わず集う交流の場としても盛り上がってい ました。イタリアの作家、アレッサンドロ・バリ ッコの講演会の質疑応答では、愛と死について人 生相談する若者の姿もありました。会場には9日 間で75万の人が訪れたそうです。滞在期間中、常 に感じられたのは人々の熱気です。それは会場の 中だけではありません。会場へ向かうバスは平日 でも朝昼問わずいつも満員でした。また、宿の従 業員もバーで居合わせた男性もFILの事を口に出 すと、自分の好きな本について熱く語り出しまし た。  滞在最終日、市街地にある図書館を訪れまし た。オクタビオ・パス中南米図書館と呼ばれるそ の図書館の奥に進むと、一画に子どものためのス ペースが用意されていました。平日の昼間だった ので子どもはいませんでしたが、児童室担当の司 書の方に話を聞く機会を得ました。本は対象年齢 ごとに分けて作家順に並べられ、選書は日本の公 立図書館とだいたい同じ方法をとっているようで した。ただ、ここでは貸出しが行われていないと いうことでした。これは子どもに限らず、大人の 利用者にとっても同様でした。この図書館が大学 付属であることがその一つの要因でしょう。た だ、街...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その8)

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CLIJALの活動から~  シピティオ 網野真木子 今回は、エルサルバドルの人びとのあいだで語り 継がれてきた愛すべき存在「シピティオ」をめぐるお 話をしましょう。  シピティオEl Cipitíoという名は、ナワ系言語で子 どもを意味するCipitか らきており、そのとお り子どものような背丈 です。シグアナバとい う女性が夫への裏切り を神に罰せられさまよ う身となる伝説の中 で、置き去りにされた 息子シピティオも罰と して永遠に成長をとめ られたといいます。彼 の特徴は小さな身体だ けではありません。突 き出たおなかにつばの 広いとんがり帽子、そして正面から見ると後ろ向き に立っているように見える、つまり足が反対向きに ついているというのが大方の説です。面白いこと に、ドミニカ共和国のシグアパやブラジルのクルピ ラなど、ラテンアメリカには、追いかけていく人を 惑わせるような足跡をつける、同じ仲間がいます。 シピティオは神出鬼没の超能力を備えているともい われ、森に住み、川べりで遊ぶ子ら(とくに若い 娘)をからかったり、夜になると台所に忍び込んで 灰を食べたり、屋根に小石をぶつけて子どもを遊び に誘い出したり、何かと悪戯好きですが、邪気は少 ないようです。先日、エルサルバドルから来日した カステジャノスさんが東京の子どもたちに昔話を語 ってくれる機会がありましたが、そこに登場したの は、「マタテロ、テロ、テロ...」と呪文を唱えて悪 い人を石に変えてしまうシピティオでした。  さて、いま私の手元にはシピティオを題材にした 2冊の絵本があります。その1冊、エルサルバドル を代表する作家マンリオ・アルゲタの『El Cipitío』 (2006)は、無邪気な姿のシピティオを森の豊かな動 植物とともに描き出しています。シピティオのこと を子ども向けに書き残そうと思い立ったのは、自ら のアイデンティティを意識したときに自然と生まれ たアイデアだった、と彼は語っています。  もう一冊は、エルサ ルバドルからアメリカ に移り住んだ詩人・絵 本作家であるホルヘ・ アルゲタの『El  Zipitio』(2003)です。 この本のシピティオは 少々趣がちがい、大人 になろうとしている少 女の前に現れて、愛を ささやく存在です。少 女ルフィーナは母親か ら...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その7)

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CLIJALの活動から~  ジョローナ 伊香祝子 今回は少々趣向を変えて、「ジョローナ」という 米国南西部からチリに至るまでの広い範囲(主にス ペイン語圏)で知られるお化けの 話をします。ジョローナ (llorona)はスペイン語で泣くと いう行為を表す動詞“llorar”からで きた言葉で「泣き虫の女、ぐちっ ぽい女」などという意味がありま すが、女性定冠詞”la”を伴い大文 字で始まる”La Llorona”は、ちょっ と特別な存在です。  ジョローナの言い伝えには諸説 あるのですが、最大公約数として は、(1)美しい娘が、よそから来た 男と恋をし、子どもをもうける、(2)男の裏切りに よって錯乱し、わが子を水死させてしまう、(3)子ど もを手にかけた苦しみから、夜になると水のある川 や湖沼などに現れて、すすり泣きながらさまよう悪 霊となり、水辺に近づくものに悪さをする、という ものです。したがって、子どもたちは「ジョローナ が来るから、水辺に近づいてはだめだよ」とか「夜 出歩くと、ジョローナに連れて行かれるよ」などと いっておどかされるのです。  諸説と言いましたが、メキシコでは、スペインに よる植民地支配の行われていた16世紀に実在した女 性(征服者コルテスの右腕となって働き、子をもう けた先住民族女性マリンチェ、また身分違いの恋を して裏切られた女性など)と重ね合わせて語られた り、先住民族の女神が形を変えたものとする説もあ ります。  ここで、映像や本の形で接することのできるジョ ローナ像のなかから、現時点でわかる範囲でいくつ か挙げてみたいと思います。  まず、最も典型的なものとしては、民話研究家・ 作家のジョー・ヘイズ(Joe Hayes)が英語と、部分的 にスペイン語で語るラ・ジョローナの伝説 http:// www.youtube.com/watch?v=D3MK6q_vfGk (リンクは youtube)があります。ちょっと怖 くて面白い怪談といった趣です。  一方、米国のチカーノ(メキシコ 系アメリカ人)社会に生まれ、新 しいチカーナ女性像を追求したグ ロリア・アンサルドゥーアのジョ ローナ像は、ポジティブなもので す。彼女は、バイリンガルの絵本 『プリエティータとジョローナ』 で、母親のための薬草をとりに出 か...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その6)

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CLIJALの活動から~  国境を越える子どもたち 小高利根子  「日本ラテンアメリカ子どもと本の会(CLIJAL)」 についてはこのシリーズの第1回目で詳しく述べま したが、この会の活動の目的として私たちは次の3 項目を挙げています。 1) 日本の人びとに、ラテンアメリカの文化や人びと のことを伝えていく。 2) 日本にくらすラテンアメリカ出身者やその子ども たちが、出身地のことばや文化を大切にできるよ うな環境作りに協力する。 3) ラテンアメリカ出身者と日本人が互いの良さを認 め合い、ともに生きていける社会づくりに貢献す る。  実際の活動としては、日本で出版されているラテ ンアメリカ関連の児童書を会のメンバーで読み合 い、推薦できる本を選ぶことから始まりました。1 年半ほど選書会議を重ね、108冊の選書リストが完 成。これらの本を展示する図書展の企画も同時進行 で進めました。  本を見てもらいたい対象者は、ラテンアメリカ・ ルーツの子どもたち、その家族、学校の先生と級 友、地域の図書館関係の方々など。どんな本である かの説明は、日本語、ポルトガル語、スペイン語の 3カ国語併記がどうしても必要になってきます。図 書展開催の準備の中で一番大変だったのは、この書 誌作成の部分ではなかったかと思います。  最終的にはB5版の用紙に3カ国語の書誌に加えて カラーの表紙写真、国旗、国の地図がついたものが 出来上がり、それをプラスチックケースに入れてそ れぞれの本の横に置くことができました。  会場内での本の並べ方としては、まず大きく地域 で分け(中南米全体、北米、中米、カリブ地域、南 米)、その中で国別に並べるというのが、一番自然 な形でしょう。ただ、私たちはそれとは別に、展示 の最初に特別なコーナーを設けました。それが「国 境を越える子どもたち」のコーナーです。  私たちが選んだ本の中に、親の移民、亡命その他 の理由で国境を越えなくてはならなかった子どもた ちについての本が15冊ありました。親たちにははっ きりした夢があり、目的があり、あるいはやむにや まれぬ事情があります。でも、子どもたちはどうで しょう?  好むと好まざるとにかかわらず親につい て行く以外に選択肢はなかったのです。異文化の中 に突然ほうりこまれた子...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その5)

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CLIJALの活動から~   バリオの子どもたちと、ラテンアメリカの児童書翻訳 宇野和美 これまで4回にわたってCLIJALの活動を紹介してきましたが、今回はバリオの子どもが主人公の児童書を紹介し、ラテンアメリカを描いた子どもの本の翻訳出版について考えてみたいと思います。  バリオとは、地方から移ってきた人びとが、街をとりまく山の斜面などに粗末な小屋を建ててできあがった低所得者居住地区のこと。ビジャ(・ヌエバ)、ポブラシオン、ファベーラなどとも呼ばれるこうした地区は、ラテンアメリカの多くの町に見られます。ごく最近日本語版が刊行された絵本『道はみんなのもの』(クルーサ文/モニカ・ドペルト絵/岡野富茂子・岡野恭介訳/さ・え・ら書房)は、ベネズエラの首都カラカスのバリオが舞台です。遊び場のないカラカスのバリオの子どもたちが立ち上がり、市役所に行って交渉し、力を合わせて公園を作りあげる物語です。    石で押さえたトタン板の屋根や、ドアがわりに布がぶらさげてある玄関、赤ん坊を抱いた女性、はためく洗濯物など、こまごまと描きこまれた写実的な絵からバリオの暮らしぶりが伝わってきます。中南米の絵本出版の草分けであるエカレ社が、海外の絵本だけでなく、自分たちのことを語る絵本もというコンセプトでつくりはじめたシリーズAsí vivimosの1冊で、30年以上もベネズエラで読みつがれてきた、実話にもとづくロングセラーです。  小学校高学年向けの物語『雨あがりのメデジン』(アルフレッド・ゴメス=セルダ作/宇野和美訳/鈴木出版)の主人公カミーロは、コロンビア第二の都市メデジンのバリオに住む10歳の男の子です。学校に行かなくなり、将来は泥棒になると豪語して、親友のアンドレスと町をほっつき歩いているカミーロは、ある日バリオに新しくできた図書館に足を踏みいれます。はじめは図書館から本を盗みだして売ることしか頭にないカミーロが、図書館員のマールさんの介在で本と出会うというお話。10歳になったのだから、金は自分でなんとかして酒を持って帰れと言うのんだくれの父親、武力抗争で殺されてしまったおじさんなど、現実は厳しいものです。しかし、アンドレスとの友情がしっかり描かれているおかげで、日本の読者が主人公に親近感を持てるのも、この作品の魅力です。  メデジンでは麻薬を手にする子...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その4)

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CLIJALの活動から~ 心をつなぐ心配ひきうけ人形 内野史子  今回は、私たちがよくワークショップでとりあげてきた「心配ひきうけ人形( スペイン語で muñeco de quitapenas または muñeco de quitapesares )」 のことをお話ししましょう。 心配ひきうけ人形と外国籍の子どもたち 私がこのお人形に出会ったのは、アンソニー・ブラウンという英国の絵本作家の『びくびくビリー』 (評論社) の絵本の中でした。いろいろなことが心配で眠れないビリーに、おばあちゃんがくれたのが、この小さな心配ひきうけ人形でした。心配ごとを人形に打ち明けて、枕の下に入れて眠れば、人形がかわりに心配してくれるから、ぐっすり眠れると。そして、この絵本の最後に、このお人形はグアテマラに昔から伝わる人形だと紹介されていました。 中米の小さな国グアテマラで作られるという、この手のひらにのるくらいのお人形の話に私はすっかり魅せられました。しかも驚いたことに、外国の民芸品を扱う近所の店で、絵本で見たとおりの、本物の心配ひきうけ人形が売られていたのです。この絵本の読み聞かせの後に、子どもたちにお人形を配る―そんな光景が、ふと頭に浮かびました。 実は私は、自分の住む千葉県八千代市の小学校で読書指導員をしています。勤務している小学校の児童数 160 名のうち 11 名が南米を中心とした外国籍児童( 3.11 以前には約 1 割いました)ですが、こうした子どもたちの日本語支援の授業でも、絵本の読み聞かせをする機会があります。これまでにも、プエルトリコからアメリカに引っ越してきた移民の少年の話『ぼくのいぬがまいごです!』(エズラ・ジャック・キーツ&パット・シェール作/徳間書店)や、ボリビア人の父親と日本人の母親の間に生まれた少女が、両国の文化を比較して語る絵本『わたしはせいか・ガブリエラ』(東郷聖美作/福音館書店)など、外国籍の子どもたちに共感できそうな絵本を選んで読んできましたが、『びくびくビリー』は、中南米に限らず、どの国の子どもにも通じる、“不安な心”を軽くしてくれそうな絵本です。絵本の読み聞かせの後に、グアテマラから渡って来たお人形の実物を見せれば、それは非常にわかりやすい異文化理解のきっかけ...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その3)

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CLIJALの活動から~ 日本の児童書から見るラテンアメリカ 細江幸世    子どもの本で南米を舞台にした物語といえば、 1927 年には翻訳されていた『母を尋ねて三千里』を思い起こす方が多いかもしれません。イタリアからアルゼンチンに働きに出た母をさがして旅を続けるマルコの姿はアニメ番組にもなり、ポンチョを風になびかせ、パンパを進む珍しい風景に心躍らせました。でも、これはイタリア人作家アミーチスが 1886 年に書いた『クオレ』で語られる毎月のお話の中の1つです。 2010 年に『多文化に出会うブックガイド』(読書工房)を編集した際、ラテンアメリカを舞台にした児童書 43 冊のうち、現地の作家か画家によるものは 14 冊。まだまだ日本の子どもたちがラテンアメリカの作家や画家の作品に触れる機会は少ないと言えるでしょう。  ところが、現在はあまり手に取られていませんが、 1960 年代から 70 年代にかけて、日本の創作児童文学の興隆時に、ノンフィクションや史実をもとに書かれたシリーズが企画され、ラテンアメリカに目を向けて描いた本が何冊か刊行されていました。『おしいれのぼうけん』(童心社)がロングセラーとなっている古田足日 (1927~) は、『コロンブス物語』( 1964 年刊、三十書房「少年少女探検家物語」シリーズ)、『インカ帝国のさいご』( 1977 年刊、岩崎書店「こどもノンフィクション」シリーズ)の2冊を上梓しています。また、平凡社「児童百科事典」の編者であり、『指輪物語』や『ナルニア国物語』の訳者としても著名な瀬田貞二( 1916~1979 )も『航路をひらいた人々』( 1967 年刊、さ・え・ら書房「さ・え・ら伝記ライブラリー」)でコロンブスを、骨太な作風で知られる乙骨淑子 (1929~1980) は『八月の太陽を』( 1966 年刊、理論社)で、ハイチ革命の指導者であったトウセン(トゥサン・ルベルチュール)を主人公に執筆しました。これらの本は、それまで書かれていた伝記本のコロンブスや世界七不思議としてのインカ帝国というものとは違った目で描かれているのが特徴です。 (左より古...

『そんりさ』にご掲載いただきました(その2)

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RECOM(日本ラテンアメリカ協力ネットワーク)の会報誌『そんりさ』に連載中の記事の内容を、許可を得て転載させていただきます。 CLIJALの活動から  〜図書展をもりあげたパペルピカド〜 -  前号のニュースレターで、日本ラテンアメリカ子どもと本の会(CLIJAL)について、結成の経緯やこれまでの歩みをご紹介しました。昨年 (2011年) 12月に鶴見で開催した図書展「開いてよう!見てみよう!子どもの本でラテンアメリカめぐり展」は、私たちにとってはじめての大きなイベントでしたが、今回は、その会場をいろどり、脇役として図書展をもりあげたパペルピカドpapel picadoについて、すこしお話したいと思います。   絵本の中のパペルピカド  メキシコの切り紙パペルピカドは、お祭りやパーティで飾られたり、土産品として売られていますから、メキシコを訪れた人なら色とりどりの万国旗のようなそれを、かならず目にするのではないでしょうか。じつは絵本の中にもパペルピカドを見つけることができます。図書展で展示した『ポインセチアはまほうの花』と『クリスマスまであと九日』の二冊はメキシコを舞台にした絵本で、前者の挿画には印象的に、後者ではさりげなく、パペルピカドが描きこまれています。  まずはストーリーをご紹介しましょう。『ポインセチアはまほうの花』の主人公の女の子は、クリスマスイブを悲しい気持ちで迎えようとしています。父親が仕事をなくし、その年はイエスさまへのおくりものを用意することができないのです。教会にやってきた彼女に石像の天使がささやきます、傍らにある草の葉をもっていきなさい、と。緑の葉をかかえた彼女が祭壇へ近づくと、それはいつのまにか燃えるような赤い花束となり、少女は喜びにあふれてこのおくりものをささげました。真心の尊さを伝える奇跡の物語です。幼少期にたびたびメキシコを訪れた米国人の作者がこの言い伝えに出会い、アルゼンチン人のイラストレーターと美しい絵本に仕上げました。 一方、『クリスマスまであと九日』は、幼い少女セシが、やってくるポサダ(クリスマス前九日間の伝統行事。マリアとヨセフの宿屋(ポサダ)さがしに見立てた行列とパーティを行う)に心躍らせるさまをたんねんに追ったもので、作者はやはり米国人です。ポサダで使うピニャタ(お菓子を入れたくす玉人形)を並べ売る...

『そんりさ』にご掲載いただきました。

『そんりさ』は1992年に設立されたRECOM(日本ラテンアメリカ協力ネットワーク)の会報誌です。RECOMは中南米の支援と情報発信を続けている団体で、主な活動は会報誌「そんりさ」の発行や、グァテマラ基金によるグァテマラ共和国の女性団体支援などです。許可を得てその内容を転載させていただきます。  日本ラテンアメリカ子どもと本の会(CLIJAL)について        はじめに  日本ラテンアメリカ子どもと本の会は、日本とラテンアメリカの人びとを、子どもの本を通じてつないでいきたいという思いで、2009年に結成されたボランティアのグループです。メンバーは、スペイン語やポルトガル語文学の翻訳や、スペイン語圏の文化などの紹介に携わる人、また、子どもの本の作り手、図書館関係者などからなっています。   結成の背景  私たちがこのようなサークルを結成したのは、この20年近くの間に、日本に住むラテンアメリカにつながる人びととその子どもたちの数が増えたことにあります。1990年の入管法の改定によって、南米の国々から多くの日系の人たちやその家族が来日し、この国で働くようになりました。  なかでももっとも多いブラジルとペルー二か国の外国人登録者数は、一時期には37万人を超えました。最初は日本を単なる出稼ぎ先と考えていた人たちのなかにも、家族を呼び寄せる人、日本で結婚し子どもが生まれる人も出てきました。子どもたちのなかには日本の学校に通う子どももいましたが、ブラジル人学校や通信教育などで、ポルトガル語やスペイン語で教育を受ける子どもたちもいました。しかし、2008年秋のリーマン・ショック以降、仕事がなくなった親と一緒に帰国する子どもや、通っていた民族学校が閉鎖される子どもたちがでてきました。2011年末の統計では、二か国の登録者合わせて27万人(ブラジル:21万人、ペルー:5.2万人)ですが、年齢層でみると0歳から19歳の滞在者数が全体の2割強で、子どもの教育がコミュニティの大きな関心事となっていることがうかがえます。    日本にくらす子どもたちが感じる不自由はさまざまです。学校では、親たちが日本の教育制度をしらないために起こる問題、個性を認めず”マジョリティ”の文化をおしつけるような風潮、言語の問題が原因で起こる学力不足。また、出身国でスペイン語やポルトガル語で教育...