【絵本で知ろう!ラテンアメリカの国】Vol.8 移民へのあたたかい手

トマスと図書館のおねえさん パット・モーラ:文 ラウル・コローン:絵 藤原宏之:訳 さえら書房 2010年2月発行 本の詳しい紹介は こちら この道のむこうに フランシスコ・ヒメネス:著 千葉茂樹:訳 小峰書店 2003年11月発行 本の詳しい紹介は こちら ラテンアメリカの国々にとって、アメリカは自由と繁栄の国。多くの人が季節労働者や移民として移動していきます。 その姿を描いた絵本として「トマスと図書館のおねえさん」を紹介します。 トマス少年は、テキサス生まれ。メキシコからの移民労働者の両親とともに、毎年夏には、野菜や果物の収穫期に合わせて農家を手伝うために、家族で合衆国国内を移動します。学校に通えないトマスは、ある町で初めて図書館を訪れ、親切な図書館員と出会い、勧められるまま本を開き、スペイン語を交えて親交を深め、読書に夢中になります。英語がわからない家族に、読み聞かせをすることも。ですが、夏の終わりには、再びテキサスへ。この絵本のモデルの少年は、本との出合いが未来を開き、後に作家となり、大学の学長も務めました。 トマスの両親のように、収穫期に合わせ北米南西部を家族で転々と移住するメキシコからの季節労働者の生活は、ミグラント・サーキットと呼ばれています。自身もその働き手として少年期を過ごしたヒメネス(主人公パンチート)は、「この道のむこうに」のなかで、その過酷な日常を綴りました。念願の小学校に通い始めても、放課後は農作業の手伝いへ。貧困と劣悪な環境下で、「移民局」の摘発に怯えつつ、熱心に英語を学び続けますが、毎夏の移動のために思うようには進みません。そんなある日、突然、移民局員に捕まり、強制退去となります。 続編「あの空の下」では、再び合衆国で、一家にようやく落ち着いた生活が訪れます。働きながら学び続け、主人公が学校に自分の居場所を見出していく過程は、中高生の共感を呼ぶでしょう。言葉の壁を克服し、未来を掴もうとする「移「民二世」の息子を理解し、励まし続ける両親と、彼の向学心に応え、導いてきた先生たちの姿が印象的です。初心を貫き教師となった彼は、遂に、自らサーキットを抜け出す未来を得ます。 外国につながる子どもにとって、ことばの習得などの学びの場は、不安を取りのぞき新しい社会への扉を開く鍵です。 合衆国には、今も移民が大勢押し寄せていますが、政策によ...