日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その10)

CLIJALの活動から~ いたずら大好き ブラジルの「サシー(SACI)」 小高利根子 今回はブラジル人なら誰でも知っている伝説上の キャラクター、「サシー」をご紹介 しましょう。 サシーは赤い三角帽子をかぶり、 口にはいつもキセルをくわえ、一本 足でピョンピョン歩いて、いろいろ 悪さやいたずらをする黒い小人。ど んな悪さかと言えば、ミルクを酸っ ぱくしたり、ハサミを隠したり、鍋 の煮豆をこがしたり、スープにハエ を入れたり…。家の中だけではあり ません。馬をおどかしたり、洗濯物 をからませたり、鶏の卵を孵化させ なかったり…。ありとあらゆるいた ずらをして人を困らせては愉快がる のです。 このサシーについて書かれた本や 絵本はブラジルにたくさんあります が、昨年暮れ、日本でも『いたずら 妖怪サッシ 密林の大冒険』の邦訳 が出版されました。これは著名な文 化人、モンテイロ・ロバートの絵本 『黄色いキツツキ農園』シリーズの うちの一巻『サシー』の翻訳です。タイトルは『サ シー』ですが、その他にもクルピーラ、ボイタタ、 牧場のネグリーニョ、オオカミ男、クッカ、水の精 イアラなどが次々と登場し、ブラジルの伝説上の主 だったキャラクターを一挙に紹介している感があり ます。 さてこのサシーはブラジル人の現代の日常生活の 中ではどんな形で登場するのでしょうか? 筆者は ブラジルに通算25年ほど住んでいますが、人間関係 をスムーズにするためにサシーはとても重要な役割 を果していると思っています。 何か失敗したとき、誰よりも本人が後悔したり、 しょげかえっているはず。そんな とき、まわりの人が「あっ、それ はサシーの仕業だ!」と言ってく れたら、どんなに救われることで しょうか。 ブラジル人とつき合っている と、人をとことん糾弾して断罪す るようなことは極力避けようとし ていることが良くわかります。こ んな国民性にサシーはぴったりの キャラクターなのかも知れませ ん。世の中には「サシーの仕業」 ということにすれば丸くおさまる ようなことはたくさんあるはず。 本当に糾明しなくてはいけないよ うな重大なことでなければ、せい ぜいサシー君に登場してもらって 「一件落着」ということにしては どうでしょうか? ★現在入手可能なサシーについ...