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【絵本で知ろう!ラテンアメリカの国】Vol.3 世界でいちばん貧しい大統領の国

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世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ くさばよしみ 編  中川孝給  汐文社  2014年3月発行 「世界でいちばん貧しい大統領からきみへ」  くさばよしみ 編  田口 実千代 絵  汐文社  2015年10月発行 2012年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議 (リオ+20)」で、環境を守り、人間が豊かに生きていくために「見直さなくてはならないのは、わたしたち自身の生き方」だと訴えたのは、当時ウルグアイの大統領だったホセ・ムヒカさん。そのスピーチが世界的に話題となり、「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」という絵本になりました。 ウルグアイの正式名称は「ウルグアイ東方共和国」。南アメリカ大陸の大西洋岸、ブラジルとアルゼンチンの間に位置する国です。国土は日本の半分くらいですが90パーセントを農業に利用でき、食料、乳製品、肉の輸出国です。「1300万頭の世界最高の牛」と「800万から1000万頭のすばらしい羊」がいると、この絵本にも説明されています。ムヒカさん自身、大統領時代も公邸ではなく町から離れた農場に住み、鶏を飼い、花や野菜を作っていたというから驚きです。 では、そういった思想や生き方の原点はどこにあるのでしょうか。「世界でいちばん貧しい大統領からきみへ」には、ムヒカさんの生い立ちや大統領になるまでのことが詳しく解説されています。 スペイン移民の父親が7歳のときに亡くなり、イタリア移民の母親が野菜を作りながら育ててくれたこと、近所で園芸をしていた日本人移民から花の栽培を教わったというエピソードもあります。 ウルグアイは第2次世界大戦中、ヨーロッパに農産物や畜産物を売って豊かになりますが、戦後は欧米に経済を支配され不安定になります。そこで強権的な軍部が権力を握り、抵抗する人々は弾圧され、ムヒカさんもゲリラ活動をして13年間も投獄されました。その厳しい獄中生活で読書をし、人間とは何かを問い続けました。古代ギリシャの哲学から南米のアイマラ族の伝統まで、歴史も地理も超えた多くの叡智がムヒカさんの思想を裏付けているのは興味深いことです。 この戦後のウルグアイのような状況は、豊かな天然資源や農産物等を産するラテンアメリカ、アフリカ、アジアの多くの国で見られることではないかと、世...

JICA筑波の図書室でCLIJALの選んだ本を展示していただいています!

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 CLIJALではメンバーが厳選した本と本の説明(日本語・ポルトガル語・スペイン語の参加国語)、写真パネルや地図、ラテンアメリカの民芸品などをパッケージにした「図書展セット」を貸し出しています。 2025年4月から5月にかけての1ヶ月ほど、JICA筑波の図書室で展示していただいています。 4月19日の一般公開日におじゃましてきました。ニカラグアから来られている研修生による絵本の読み聞かせもあり、大盛況でした! 写真は展示の様子です。 図書展セットは随時貸し出しています。詳細は こちら ぜひ、ご活用ください! お問い合わせをお待ちしています。

【絵本で知ろう!ラテンアメリカの国】Vol.2 道はみんなのもの

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道はみんなのもの クルーサ文 岡野富茂子・岡野恭介 共訳 モニカドペルト絵 さ・え・ら書房2013年1月発行 ISBN978-4-378-04136-0 本の詳しい紹介は こちら つまらなさそうに遠くの町並みを眺めている子どもたち。下に広がるのは、近代的なビルと大きな道をどんどん走っているトラックやバス。表紙から裏表紙にまで続く1枚の絵で対比されるトタン板の家の建つ赤茶けた場所との違いにびっくりすることでしょう。 ここに描かれているのは、ベネズエラの首都カラカスです。南米北部、カリブ海に臨む自然豊かな国ベネズエラは昔はコーヒーなどの輸出で有名でした。1920年代に入って石油輸出を始めると、地方の町や村から人々が都市へやってきました。カラカスでも、街を取り巻く山の斜面に急ごしらえの家を建てて仕事を求めてやってきた人たちが暮らし始め、そのようにしてできた集落が「バリオ」と呼ばれています。 山の自然はすっかりなくなり、子どもたちの遊び場所は、家々の間の狭い道だけ。それでも、うるさいと怒られ、車が入ってくると「こんなところで遊ぶんじゃない」と怒鳴られる始末。「道はみんなのものだよ」と口答えしても、大人は誰も聞いてくれません。それで表紙の子どもたちはふくれっ面をしていたのですね。 バリオの中には普通の家を改造した図書館がありました。本を読んだり、ゲームをしたり、 粘土遊びやお絵かきもできるけれど、やっぱり外で遊びたい。どうしたら自分たちの遊び場が持てるのかと考え込んでいると、図書館員が子どもたちの意見に耳を傾け、背中を押してくれたのです。「遊び場がありません。公園を作ってください」と書いた横断幕と意見書を持って、市役所に出かけた子どもたちは市会議員か市長に会わせてほしいと言うのですが・・・。 この絵本は、バリオに住み、遊び場がほしいと願っていた子どもたちが実際に体験したことを元にしたお話なのだとか。子どもたちの行動力が頼もしく、市会議員の欺瞞や大人の身勝手さにびっくりしつつも、この1人ひとりの有り様が社会そのものを表しているのだなと感じられます。 やがて、自分たちの手で公園を作り始める住民と子どもたちの姿に、読者も嬉しく思うはず。自分たちの思いをしっかりと伝えて、自ら行動する子どもたちを支え、見守る大人が図書館にいることが素敵。本の力、教育の力を大切に思っている作家ならではの...