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5月, 2015の投稿を表示しています

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その9)

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CLIJALの活動から~  グアダラハラブックフェアと 公立図書館訪問 鋤柄史子  昨年11月30日から12月8日まで、メキシコのグ アダラハラにて国際的なブックフェア(Feria  Internacional del Libro de Guadalajara、以下 FIL)が開催されました。私は4日間ここに足を 運びました。今回はFILの様子とともに、街の図 書館についてもお話しします。  身にしみるような寒さが続いていた東京を離れ てグアダラハラへ向かい、朝を迎えた時、太陽の 暖かさを身体いっぱいに感じました。時差ボケも 気にならず、早速FILの会場へ。FILは、年に一度 開かれるラテンアメリカ最大のブックフェアで す。メキシコ国内のみならず他の中南米や欧米等 の出版社が各々のブースに本を並べ、会場を埋め 尽くします。開催期間中は一般に開かれた時間が 設けられていて、その時間になると会場の人口密 度がぐっと高くなります。国内外の著名な作家の 講演会やサイン会、表彰式が行われる等、まさに 本の祭典、ビジネスの場としてのみならず、老若 男女問わず集う交流の場としても盛り上がってい ました。イタリアの作家、アレッサンドロ・バリ ッコの講演会の質疑応答では、愛と死について人 生相談する若者の姿もありました。会場には9日 間で75万の人が訪れたそうです。滞在期間中、常 に感じられたのは人々の熱気です。それは会場の 中だけではありません。会場へ向かうバスは平日 でも朝昼問わずいつも満員でした。また、宿の従 業員もバーで居合わせた男性もFILの事を口に出 すと、自分の好きな本について熱く語り出しまし た。  滞在最終日、市街地にある図書館を訪れまし た。オクタビオ・パス中南米図書館と呼ばれるそ の図書館の奥に進むと、一画に子どものためのス ペースが用意されていました。平日の昼間だった ので子どもはいませんでしたが、児童室担当の司 書の方に話を聞く機会を得ました。本は対象年齢 ごとに分けて作家順に並べられ、選書は日本の公 立図書館とだいたい同じ方法をとっているようで した。ただ、ここでは貸出しが行われていないと いうことでした。これは子どもに限らず、大人の 利用者にとっても同様でした。この図書館が大学 付属であることがその一つの要因でしょう。た だ、街...

【おすすめの本】★ブラジルの友だち/ Amigos do Brasil/ Amigos de Brasil

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ブラジル / Brasil 佐藤郡衛監修 / Gunei Sato(Supervisor) 学校図書/ Gakko Tosho 2000 世界の友だちとくらし くらし・文化/ vida e cultura / vida y cultura ノンフィクション / não ficção / no ficción 小学校高学年から / a partir de 10 anos de idade / a partir de 10 años ブラジルの概要に始まり、日本人学校とブラジル人学校の紹介、簡単なポルトガル語、家庭や町の様子、文化の紹介のほか、ブラジル人が多く住む日本の町も紹介されています。全体に写真が豊富で読みやすく、遊びの説明でブラジル式「せっせっせ」を数枚の写真で紹介したりするなど、きめ細かい配慮が行き届いた編集です。巻末には天然資源や政治経済の話、歴史、日本とブラジルの関係についてもまとめられていて充実した内容。最後のページ「日本とブラジルはたすけたり、たすけられたり」で、人と人との交流の大切さが強調されています。 Informações bem variadas sobre o Brasil:  perfil do país, escolas brasileiras e escolas japonesas que há no Brasil, frases fáceis da língua portuguesa, os lares e as ruas, cultura, assim como as cidades no Japão onde moram muitos brasileiros.  É um livro editado com minuciosas atenções e fácil de ler com as fotos abundantes.  Por exemplo, mostrando com algumas fotos, nos explica que existem jogos infantis muito parecidos no Brasil e no Japão.  No final  do livro, se fala ...

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その8)

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CLIJALの活動から~  シピティオ 網野真木子 今回は、エルサルバドルの人びとのあいだで語り 継がれてきた愛すべき存在「シピティオ」をめぐるお 話をしましょう。  シピティオEl Cipitíoという名は、ナワ系言語で子 どもを意味するCipitか らきており、そのとお り子どものような背丈 です。シグアナバとい う女性が夫への裏切り を神に罰せられさまよ う身となる伝説の中 で、置き去りにされた 息子シピティオも罰と して永遠に成長をとめ られたといいます。彼 の特徴は小さな身体だ けではありません。突 き出たおなかにつばの 広いとんがり帽子、そして正面から見ると後ろ向き に立っているように見える、つまり足が反対向きに ついているというのが大方の説です。面白いこと に、ドミニカ共和国のシグアパやブラジルのクルピ ラなど、ラテンアメリカには、追いかけていく人を 惑わせるような足跡をつける、同じ仲間がいます。 シピティオは神出鬼没の超能力を備えているともい われ、森に住み、川べりで遊ぶ子ら(とくに若い 娘)をからかったり、夜になると台所に忍び込んで 灰を食べたり、屋根に小石をぶつけて子どもを遊び に誘い出したり、何かと悪戯好きですが、邪気は少 ないようです。先日、エルサルバドルから来日した カステジャノスさんが東京の子どもたちに昔話を語 ってくれる機会がありましたが、そこに登場したの は、「マタテロ、テロ、テロ...」と呪文を唱えて悪 い人を石に変えてしまうシピティオでした。  さて、いま私の手元にはシピティオを題材にした 2冊の絵本があります。その1冊、エルサルバドル を代表する作家マンリオ・アルゲタの『El Cipitío』 (2006)は、無邪気な姿のシピティオを森の豊かな動 植物とともに描き出しています。シピティオのこと を子ども向けに書き残そうと思い立ったのは、自ら のアイデンティティを意識したときに自然と生まれ たアイデアだった、と彼は語っています。  もう一冊は、エルサ ルバドルからアメリカ に移り住んだ詩人・絵 本作家であるホルヘ・ アルゲタの『El  Zipitio』(2003)です。 この本のシピティオは 少々趣がちがい、大人 になろうとしている少 女の前に現れて、愛を ささやく存在です。少 女ルフィーナは母親か ら...