鋤柄史子
昨年11月30日から12月8日まで、メキシコのグアダラハラにて国際的なブックフェア(Feria Internacional del Libro de Guadalajara、以下FIL)が開催されました。私は4日間ここに足を運びました。今回はFILの様子とともに、街の図書館についてもお話しします。

業員もバーで居合わせた男性もFILの事を口に出すと、自分の好きな本について熱く語り出しました。
滞在最終日、市街地にある図書館を訪れました。オクタビオ・パス中南米図書館と呼ばれるその図書館の奥に進むと、一画に子どものためのスペースが用意されていました。平日の昼間だったので子どもはいませんでしたが、児童室担当の司書の方に話を聞く機会を得ました。本は対象年齢ごとに分けて作家順に並べられ、選書は日本の公立図書館とだいたい同じ方法をとっているようでした。ただ、ここでは貸出しが行われていないということでした。これは子どもに限らず、大人の利用者にとっても同様でした。この図書館が大学付属であることがその一つの要因でしょう。ただ、街の中心にありながら、図書の貸出しが権利として認められていないことに市民は不便さを感じているはずです。理由を尋ねると、盗まれる可能性があるから、という返答でした。
児童室は休日になると、近所の親子連れから観光客、あるいは物売りの子どもたちなど様々な来客があるようです。6畳程のスペースに、あらゆる子どもたちがごった返すのです。休日の児童室にはFILで感じたのと同様の熱気がたちこめるのでしょう。図書館を出て宿へと帰る道すがら、その様子を想像して顔をほころばせると同時に、閉館時間を気にすることなく本を読みたい子らのために、何とか図書館の貸出しを実現してほしいと強く思いました。