ブラジル以外の大半の国々ではスペイン語が話されていますが、 アンデス山脈一帯にはケチュア語やアイマラ語を話す先住民がいます。今回ご紹介する絵本の舞台はペルーのアンデスの高地です。描かれているのは「ペルーの」というよりも、ボリビアなどにも広がるアンデス山脈の先住民の文化です。
物語絵本 『じゃがいもアイスクリーム?』の見返しには、アンデスの村の全景が見えます。 主人公の少年の住む標高4000メートル (富士山よりも高い!) の村は、ジャガイモしか採れません。ごはんもおやつもジャガイモ。でも、ジャガイモといっても種類は豊富です。ここはジ ャガイモのふるさとなのです。
幼児・小学校低学年から、お話を楽しみながらアンデスの暮らしに親しめます。実際に現地で取材した著者の温かい絵からは、色あざやかな毛糸の帽子や衣服、家の中、アルパカを飼いジャガイモを収穫する様子などが伝わってきます。ジャガイモでどうやってアイスクリーム ができるのか、興味がわいてきます。
もう1冊、探検家の関野吉晴さんのノンフィクションの写真絵本『地球ものがたり インカの村に生きる』は、ペルーの山奥の、日本人が誰も行きそうにない村で撮られた貴重な記録です。 厳しい自然の中、常に集まり、話し合い、力を合わせる家族やコミュニティ、家畜の世話など役目を負いながら遊ぶ子どもたち。その日常のさまざまな表情をカメラがとらえます。
保存用の乾燥ジャガイモはこんなふうに作られるのか、アルパカはこんなに役に立つのか、 トウモロコシにはピンクや紫などこんなに種類があるのかなど、見るたびに驚きや発見があり、 3・4年生から大人まで楽しめます。ゆっくりと本をめくれば、深く心にとどまる自分だけの気づきや考察につながることでしょう。
(宇野和美 うのかずみ)