日本ラテンアメリカ協力ネットワーク『そんりさ』連載記事より(その4)
CLIJALの活動から~ 心をつなぐ心配ひきうけ人形 内野史子 今回は、私たちがよくワークショップでとりあげてきた「心配ひきうけ人形( スペイン語で muñeco de quitapenas または muñeco de quitapesares )」 のことをお話ししましょう。 心配ひきうけ人形と外国籍の子どもたち 私がこのお人形に出会ったのは、アンソニー・ブラウンという英国の絵本作家の『びくびくビリー』 (評論社) の絵本の中でした。いろいろなことが心配で眠れないビリーに、おばあちゃんがくれたのが、この小さな心配ひきうけ人形でした。心配ごとを人形に打ち明けて、枕の下に入れて眠れば、人形がかわりに心配してくれるから、ぐっすり眠れると。そして、この絵本の最後に、このお人形はグアテマラに昔から伝わる人形だと紹介されていました。 中米の小さな国グアテマラで作られるという、この手のひらにのるくらいのお人形の話に私はすっかり魅せられました。しかも驚いたことに、外国の民芸品を扱う近所の店で、絵本で見たとおりの、本物の心配ひきうけ人形が売られていたのです。この絵本の読み聞かせの後に、子どもたちにお人形を配る―そんな光景が、ふと頭に浮かびました。 実は私は、自分の住む千葉県八千代市の小学校で読書指導員をしています。勤務している小学校の児童数 160 名のうち 11 名が南米を中心とした外国籍児童( 3.11 以前には約 1 割いました)ですが、こうした子どもたちの日本語支援の授業でも、絵本の読み聞かせをする機会があります。これまでにも、プエルトリコからアメリカに引っ越してきた移民の少年の話『ぼくのいぬがまいごです!』(エズラ・ジャック・キーツ&パット・シェール作/徳間書店)や、ボリビア人の父親と日本人の母親の間に生まれた少女が、両国の文化を比較して語る絵本『わたしはせいか・ガブリエラ』(東郷聖美作/福音館書店)など、外国籍の子どもたちに共感できそうな絵本を選んで読んできましたが、『びくびくビリー』は、中南米に限らず、どの国の子どもにも通じる、“不安な心”を軽くしてくれそうな絵本です。絵本の読み聞かせの後に、グアテマラから渡って来たお人形の実物を見せれば、それは非常にわかりやすい異文化理解のきっかけ...